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はじめに
学生時代(女子校)は、暖かい温室そのものだった。いじわるする人なども、ほとんどなく(例外あり)みんなで楽しく学生生活を、送ることができた。ところが、社会人になったとたん、色々な思想を持った種族との出会いがあった。このお話は、わたしが実際出会った、俗にいう社内で、「お局様」といわれていた人びとである。当時をふりかえり、あえて現在形で、そのときの自分の心理状態を表現しているシーンもある。
それでは、これからはじまる、わたしのお局奮闘記をトクとご覧あれ。
Vol.1 はじめてのお局様(大奥支配型)
短大卒業後、某企業に入社する。同じ事業部で、わたし他5名の女性がいる。職場の雰囲気はとてもアットホームなもので、快適な毎日がつづく。ところが、あるときから原因不明の圧迫感が、わたしを襲う。それが、お昼をいつもそのメンバーで、一緒に食べなくてはならないきまり。仲が良くてよろしいのだが、お昼くらい別の仲間と「いきぬき」がしたい。無論、職場の先輩は可も不可もなく優しい面々なのだが、その提案は、一番年上の先輩のものだった。
彼女は既婚で、独身時代からその妖艶な美しさで、他部署の男性社員からも、人気のマドンナ的存在である。決して誰もさからえないのだ。彼女のモットーは、「みんないつもいっしょに・・・」で、女王様として家来(後輩)を引き連れて、社内を練り歩きたいタイプらしい。みんなそれぞれ予定があって全員揃うのは無理だというのに、半強制的に社内旅行を強行したりする。かくゆうわたしも、お稽古ごとをわざわざ休んで対応したほどだ。
そんなこんなで、翌年わたしの下に3名の新人が入社してくる。さらに、翌々年は超現代娘風の新人2名が続々と入社する。実は、この5名の救世主のおかげで、いつもお昼を一緒にしなくても良くなる傾向になってくる。彼女の方針に反抗しほうだいの5名を見て、「ありすちゃんのときは、何とかなった(てなずけたの意か?)のに・・・」と、ボソっと寂しくつぶやいた。哀れお局様!そして大奥ついに崩壊。しかしお局様に勝るとは、たいした肝っ玉の新人たちだ。ある意味たのもしく思える。
Vol.2 人事異動先にて (血液型相性診断絶賛型)
入社3年目。社内活性化のため、異例の人事異動。が、そこで問題のアノ彼女と出会うことになるとは・・・実は、以前会議室でみかけた記憶がある。まぶたに、これでもかとブルーのアイシャドーをたっぷりつけた、Dr.スランプアラレちゃんといえば、わかりやすいだろうか。第一印象で、インパクトは十分。うーん。イカシテルぜ。
風のたより(社内のうわさ)から・・・実は、わたしの前任者と彼女は正反対の性格でウマがあわなかったらしい。社内中に響き渡るほどの大声での、壮絶バトルの繰り返し。ついに前任者は、胃を患い異動申請。が、その後そのポストに配属された、新入社員が研修中に、「わたしには荷が重すぎる」と、またしても退陣してしまう。なぜか、イワクインネンつきの部署なのだ。
わたしは、うわさは単なるの一部としてデータとして処理するタチだ。でも、今回ばかりは、手ごわい相手だと少し警戒している。だが、ペアで仕事をしていくうちに、もしかしたらあのうわさはニセモノじゃないの?と、勘違いするほど、穏やかにときが流れる。嵐の前の静けさなのか?不気味だ。
お局様のお話によると、彼女(O型)は(彼女のだんなさまがAB型)前任者(A型)とは血液型の相性が最悪でAB型(わたし)とは最高とのこと。(血液型相性診断の専門書によると、お局様的解釈とは逆で、AとOは最高で、ABとOは大吉か大凶にわかれるそうだ)その上、同僚もO型かAB型で統一しているという念のいれよう。なるほど、そういうカラクリがあったのか。「AB型だから自分と相性が良い」と思いこんでいる。まあ、それはそれでラッキーだったのかもしれない。
一方、なぜだか前の部署の同僚が、哀れみの表情を浮かべ、何かと用事をつくっては、かわるがわる視察にやってくる。けれど、本心は手にとるようにわかる。心配しているのではなくて、単なる好奇心なのだ。お局様にいじめられているシーンを見逃すまいと、見学にきているわけだ。わたしは、客よせのパンダちゃんじゃないぞ。はいはい、これから整理券を配ります。拝観料1人100円いただきますよ。まったく、しょうのない連中だ。
そんなこんなで、お局様が退職する日に、部内恒例の花束を手渡す。すると、みるみるうちに、大粒の涙を流して、「上田さん!ありがとう。本当に・・・」と、感極まっている。ブルーのアイシャドーがペンキのように、ドロドロと剥げ落ちている。あれあれあれ?鬼の目にも涙ですか。まあ、たしかに、いじわるされたことも色々とあったけど、しょうがないか。なんだかわからないけど、感激しているみたいだし、めでたしめでたし・・・とするか・・・
Vol.3 本当の試練…派遣社員時代
(未練たらたら、がけっぷち退職拒否型)
転職のため、英語翻訳と外資系秘書養成の専門学校に通う決心をする。そのための学費を捻出する手段として、派遣社員として半年勤務することになる。その職場でのお局様こそモウ強烈なお方だ。いつでもどこでも、あの顔はすぐにハッキリと、思いだすことができる。顔全体から、いや、全身から威圧オーラが、「どうだ!まいったか!」と、いわんばかりに出ている。いまだかつて出会ったことのない人種だ。彼女はわたしと同じ年齢で結婚のため退職する。つまり、彼女の後任をひきうけるというわけだ。
そう・・・周囲の人間からうらやましがられる、一番女性として輝かしい時期のはず。それなのに、それなのにどうして?そんなに執拗な「いやがらせ」をするのか、まったく気持ちが理解できない。むしろ、転職などと言って、婚期を遅らせている私こそが、彼女に嫉妬して逆にいじわるする立場だろうに・・・と冷静に考えたりもする。
まず、仕事の引継ぎ内容をわざと早口でまくしたてるように(相手に理解できないように)説明する。まさに、弾丸サーブと100本ノックを交互に受けているようなものだ。だから、まったく理解不可能。プラス、ごていねいに、引継ぎを小出しにしか教えてくれない。「あっ!それは、退職後に教えます」と。そう、彼女は退職後、それも2ヶ月後でも2週に1度のペースで会社に登場する。それに、今から10年以上も前の、その当時画期的ともいえる、マウスを使用した端末の操作方法など、知るよしもないわたしに、「あれ?マウスはじめてなんですか?」とすっとぼけて勝利の笑みニヤリ。PC関係は、習うより慣れろ。最初の一ヶ月は泣きべそかきかき地獄の自主特訓。
自分の派遣社員経験上いえることだが、まずズブの素人に、新しい知識をうえつけることじたいが、1度や2度の説明では不可能なことだ。そして、何がわかって何がわからないのかすらも、わからない新人に、「何か質問あるなら今のうちに・・・」などといわれても、無理難題である。その上、彼女のことば使いはとても荒い。それに、いつも顔が恐い。(顔の造作うんぬんではない。表情の意)強烈な威圧感で、相手をノックアウトする。質問などしようものなら、「ふん!」という始末。さすがのわたしもあまりのひどさに、笑いさえでてきてしまう。露骨ないやがらせだ。だから、仕事のわからないことだらけで、不安なままときが流れていく。
毎日が、とても不安だ。でも、周囲の社員さんが見るに見かねて、お局様のいない間は、つきっきりで手伝ってくれる。「捨てる神あれば拾う神あり」心底感謝の気持ちでいっぱい。周囲の暖かい人々のフォロー・・・人のぬくもりを感じる。それがあるからつづけられる。
風のたより(社内のうわさから・・・)お局様のフィアンセは、社内のひと。本当は結婚後も仕事を続けたいのにもかかわらず、社内での結婚のため、やむなく彼女が退職に追い込まれたようだ。お金に人一倍執着しそうなタイプだったので、悔しくて悔しくてたまらなかったのだろう。その腹いせを後任者のわたしにぶつけて、ストレス発散していたというわけだ。それと、お局様の仲良しグループもまた、威圧感たっぷりの面々で社内では一目おかれていたと、もっぱらの評判だ。
社員さんから、「よくがんばっているね。あの人恐くて大変でしょ」と多くのねぎらいの言葉をいただく。やっぱり、彼女はケタはずれにユニークな人だった。しかし、気持ちはわかるが、不運なのはこのわたし。なにも、八つ当たりしなくてもいいのに、ひどすぎる。
胃の痛みが続く。このまま、本当に仕事を続行可能なのか? 色々な思いが交錯する。でも、派遣社員の名にかけて、プロ意識を捨てるわけにはいかない。お請けした仕事は最後まで完璧にこなす。それがわたしのモットーだから・・・やるしかない。
そんな執拗な、いやがらせから半年。彼女もだんだんと、居場所がなくなったことを察知したのか来社しなくなる。ふたたび、穏やかで優しいときが流れる。そして、あっという間に、契約修了のときをむかえる。新入社員にきちんと引継ぎをして、円満退社。女子社員みんな仲良しだったので、寂しくなってくる。取引先の方から「あなたのような方でしたらすぐにでも、うちの会社で採用したい」といわれる。社員さんからも「よくがんばりましたね。辛かったでしょう。社員以上に仕事をしていただいて感謝しています」と。もちろん、お世辞だってわかっている。100%本気にしているわけじゃない。
でも、何ものにも変えがたい最高のネギライのことば。終わりよければすべてよし。いろいろあったけど、辛かったけど、いい社会勉強になった。この先何がきても恐くない。自分で自分をほめてあげたい。えらいぞ・・・ってね。
Vol.4 最後の聖戦???(超自己中心&わがまま勘違い型)
専門学校修了後、念願の正社員として再就職。新たな期待を胸に入社する。が、またしてもまたしても同僚の魔の手が・・・彼女は、以前、国会議員の秘書(自称なのでこれが一番怪しいのだが・・・)という肩書きの持ち主。それを鼻にかけているのがミエミエ。超高飛車な態度で、富士山より高いプライド。恐れいりました。
わたしは、実は社長秘書なのだ。だけど、それを自慢するなんて、おかどちがい。というのも、欧米では秘書は一番無能な人間がつく仕事であると、同僚から聞いていたからだ。日本では、好印象の秘書という肩書きでも、ヌカ喜びは禁物だ。無能だと評価されないように、がんばるしかない。そう思った矢先のことだ。1ヶ月遅れで、彼女が入社してきたときの、あいさつまわりの会話だ。
高飛車の彼女 「ここの会社の社長秘書は、威厳がないわね」
腰の低い社長秘書 「(え?)」
高飛車の彼女 「ちょっと、あなたしっかりしなさいよ」
腰の低い社長秘書 「(なんでなんで?)」
高飛車の彼女 「この会社も大したことないわね」
「あなたひとりっこなのですってね。わたしもそうだけど、
あなたの家とわが家とは格が違うから・・・
わが家はね跡取り問題で大変よ。
何しろ、先祖代々続く由緒正しき家系なのだから・・・
○×△□%&$∞」
あまり聞きたくもない、家の自慢話を鼻高々に、延々とする彼女。急ぎのレターを作成しているタイプの手が止まる。とても、仕事の迷惑になっている。だが、立場上無視もできないのが辛いところだ。要するに自慢話なわけだ。「社長秘書なんてちょろいもの」といいたかったのだろう。それが初日の彼女のごあいさつ。見事言いたいことを、言いたい放題で退散する。
わたしは、こう思う。前任者もそうだったが、勘違いしている秘書が多すぎる。確かに、秘書がコメツキバッタのようにペコペコするのは、よくない。だが、偉いのは自分の上司のみであって、秘書はあくまでも、黒子にすぎないのだ。決して偉いわけではない。それを勘違いして自分が偉い人物であるかのように振舞うのはおかしい。威厳などいらない。しいていえば、来客への心配り目配りと他の社員とのパイプ役を忘れないこと・・・これが一番大事。それに年配のおじさまが多いので、養老院に勤務しているようなものだ。物忘れのフォローやら、食事の制限の心配やら・・・華やかな世界なんて誰が言いだしたのだろう? TVドラマなどに登場してくる秘書は、華やかすぎると思う。
それからも、彼女は自分中心の生き方(ポリシーというべきなのか)を貫き、仕事でも、歓送迎会等の食事会でも、あくまでも自分の都合にあわせようとしていた。そんな非常識的な態度をとりつづけていたので、周囲の女子社員から大変ヒンシュクをかっていたことは、いうまでもない。
わたしは、立場上中立をとらざるをえなかったが、個人的には、わりきれない気持ちをひきずる毎日だ。
その後、彼女は結婚間近の婚約者をあっさり捨て、彼女のいる別の男子社員(2人共社内)と既成事実(今流行りのできちゃった婚)を作って略奪婚してしまう。当時、社内の全女子社員から大ブーイングのあげく、送別会すら開いてもらえなかったのは、いうまでもない。最後の悪あがきか、取引先に退職のあいさつ回りで、会社の社員にいじめられて、あの会社は最低な会社だと、吹聴しまくったらしい。ここまで、ハチャメチャにしていただくと、実に気持ちいい。こんな非常識なふるまいが、世の中なりたってよいのだろうか? 捨てられてしまった婚約者および略奪した男性の彼女に心からお悔やみ申し上げたい。エイメーン・・・チーン。
お局様たちのおかげで、今のわたしがある。もしも、彼女たちに色々と鍛えあげられていなかったら、ただのひよっこOLで一生を終えていたかもしれない。ある意味感謝せねばならないだろう。
またお局様の特徴として、仕事ができない人や、ヒマ人が多いことは確かだ。でなければ、(仕事が忙しければ)いちいち他人のことをかまっているヒマはないだろう。
どのシーンにも存在するお局様も、必ずや人間味のある部分を持っているはずだ。それをうまくみつけて、少しばかりその部分を拾いあげて対応するべし。それが、わたしのお局様攻略法である。
あなたの心の中にもきっと潜んでいる、お局様のココロ。
次期お局様は、あなたかもしれない。
就任の暁には、わたしが取材に行くので、ぜひともお知らせ願いたい。
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