おみやげ  短編小説    薊野成美


あるところに、一台の飛行機がありました。芯は細い木でできていて、赤い模様のついた緑色の羽根をしていて、指でプロペラを回すと、芯につながったゴムがくるくるとねじれて空を飛ぶ、小さなおもちゃのヒコウキでした。
 ヒコウキを持っていたのは小さな女の子で、名前はかえでちゃんといいました。かえでちゃんは体があまり丈夫ではなく、おうちの中で、たいてい一人で遊んでいました。

いつもおうちで遊んでいたかえでちゃんですが、ある時、ついに重い病気にかかってしまいました。もう、おうちにはいられません。かえでちゃんは『病院』に『にゅういん』することになりました。

ヒコウキは『病院』を知っていました。白い壁をした、大きな建物のことです。でもヒコウキは『にゅういん』が何のことだかわかりませんでした。でも、かえでちゃんが淋しそうな顔をしていたので、あまり良くないことなのだろうと、なんとなくわかりました。

かえでちゃんは『にゅういん』をしました。ヒコウキは『にゅういん』が『入院』であるということ、かえでちゃんは当分、家にも帰れないし、一歩も外に出られないということがわかりました。かえでちゃんは、ヒコウキに向かって言いました。「ごめんね、ヒコウキ。かえで、入院してなくちゃいけないから、しばらく、おうちの中も飛ばせてあげられないんだ」かえでちゃんは、少しだけ泣いていました。

ヒコウキはその夜、誰にも見つからないように、病室の窓を開けました。それからたった一人で、プロペラをいっぱいに巻きました。ヒコウキの心は、もう決まっていました。「かえでちゃんのかわりに、ぼくは外に出よう。そして、世界中のいろんなものをいっぱい見てきて、それをかえでちゃんに話してあげよう」 ヒコウキは、音もなく夜空に飛び立ちました。


 ヒコウキは、広い広い水の上を飛びました。テレビじゃない、本物の海を見たのは、これが初めてでした。灰色の鳥の群が、ヒコウキに近づいてきました。
「キミは誰? 鳥じゃないねぇ。キミはボク達よりも硬そうだ」群の中の一羽が言いました。
「ぼくはヒコウキだよ」
「飛行機ぃ? それにしちゃずいぶん小さいね。ボクたちとほとんど変わらない。飛行機ってのは、もっと大きいものだよ」
「ぼくはおもちゃのヒコウキだから」
「ふーん」
別の一羽がたずねました。
「で、そのおもちゃのヒコウキが、いったいこんなところで何をやってるわけ?」
「それなんだけど」ヒコウキはたずね返しました。「ぼくは今、おもしろくて素敵なものの見られる所を探しているんだ。大事な友達に、素敵な話をしてあげたいから。どこか良いとこ知らない?」
鳥達は、少し考えると、
「このまままっすぐ飛んでいけば、アメリカっていう国にたどり着くよ。そこは大きくて面白い。もしもキミが、まだまだたくさん飛べるなら、そこへ行ってごらん。良いみやげ話が見つかると思うよ」
ヒコウキは、自信を持って答えました。
「大丈夫。ぼくはプロペラさえ巻けば、どこまでだって飛んでゆけるんだから」
「そうかい、それなら安心だ。がんばれよ、友達によろしくな!」

鳥達は、ぐうっと南へ曲がって、行ってしまいました。ヒコウキは、そのまままっすぐ進みました。



やがてヒコウキは、緑色の芝生がどこまでも続く、のどかな田園風景にたどり着きました。広い緑のじゅうたんの上にポツンポツンと、まるでおもちゃのような家が建っているその風景は、かえでちゃんの好きな、十二枚セットの絵はがきのようにきれいでした。
「ぼくが人間だったら、この景色をカメラで撮っておくのに」ヒコウキは、少し残念に思いました。
その時、ゆっくりと飛ぶヒコウキの後ろで、甲高い声が聞こえました。
「おじいちゃん、見て! ひこうきだよ! どこから飛んできたんだろう?」

ヒコウキがくるりと旋回して後ろを見ると、さらさらの短い金髪に、かえでちゃんの持っているビー玉みたいに青い目をした五歳くらいの男の子が、真っ白な長いひげを生やしたおじいさんの手を引いて、じっとヒコウキのことを見つめていました。
「おじいちゃん、このひこうき、どこから飛んできたんだろう?」男の子は、おじいさんを真っ直ぐに見上げました。
「そうじゃのう。きっと、誰かが遊んでいる時、風に飛ばされてしまったんだろうな。見ろ、ゴムがほとんど伸びてしまっとる。巻き直してやったほうが良さそうじゃ」

おじいさんはヒコウキをつかんでそう言うと、ヒコウキのプロペラをくるくると巻き、男の子に持たせてやりました。
「そら、飛ばしてごらん」
 男の子は腕を高く上げ助走をつけると、ヒコウキを勢いよく空に放りだしました。
「ニューヨークまで飛んで行けー?G」
「おや、ピートはニューヨークに行きたいのかい?」「うん、だってぼくー……」

気持ち良いほど速く飛びながら、ヒコウキはつぶやきました。「帰ったら、今の男の子のことを、かえでちゃんに話してあげよう」



自分を飛ばしてくれた男の子の言葉に従って、ヒコウキはニューヨークを目指しました。ニューヨークの場所は、だいたい見当がついていました。「たぶん、このままずぅっと東に向かえばいいんだ」
 ヒコウキは、夜も昼もなく、飛び続けました。やがて、ニューヨークのシンボル、巨大な『自由の女神』の姿が、ヒコウキにも確認できるぐらいに近くなっていきました。
「あれが『自由の女神』かぁ〜…。ほんとに大っきいんだなぁ……」と、ヒコウキが思わず見とれたその時、
   ごうっ
「うああっ!」

ビル風にあおられて、ヒコウキはぐるんと回転すると、バランスをくずし、地面に向かって真っ逆さまに落ちていきました。
「わああああっ?G」
 もうだめだ、とヒコウキは思いました。どんどん地面が近づいて、ものすごい勢いで叩きつけられて、もしかしたら、羽根に穴が空くかもしれない。もしも、そうなったら………!
ごつっ

変な音がしました。ヒコウキは、何ともありません。ちょっとプロペラがひしゃげたかもしれませんが、それだけです。人間でいうなら、かすり傷程度といったところでしょうか。でも、どうして?
「いっ……てぇ……」
横を見ると、頭のてっぺんを押さえて、うずくまっている少年がいました。
「な、んなんだよ…」

少年は、ヒコウキをいまいましそうににらみつけると、ヒコウキを持ち上げ、ひっくり返して、木でできた芯をながめました。
「なんか、書いてあるな。…これ何語だ? 読めねぇな」

そこには、かえでちゃんの字で『のざきかえで』と書いてあったのですが、少年にはわかりませんでした。
「くっそ………」

少年はヒコウキをぐっとつかむと、野球のボールを投げるように、ヒコウキをぶん投げました。
「わあっ?G」
 ヒコウキは、自分の意志とは無関係に、弧を描いて飛びました。
 投げられながら、ヒコウキは思いました。「どうせ投げてくれるなら、プロペラを前にして投げてくれれば、もっと飛びやすかったのにな」

ヒコウキは、ビルのテラスの上に着地すると、自分でプロペラを巻き直し、再び東に向かって飛び始めました。
「もう、『自由の女神』は、見なくていいや」ヒコウキは、笑いながらつぶやきました。「またあんな目に遭ったら、今度こそ羽根に穴が空いちゃうよ」

ヒコウキは、ビル風をすり抜け、広い空に出ました。そしてつぶやきました。「このことも、かえでちゃんに話してあげよう。きっと、大きな声で、笑うだろうなぁ」
ヒコウキは、海風に乗って、一直線に飛び続けました。



やがてヒコウキは、冷たい雨が降り霧が立ちこめる、優雅な街並みにたどり着きました。傘をさした紳士やご婦人が、コツコツと靴音をさせながら、れんが造りの通りを歩いています。
「なんだか映画みたいだ」
 ヒコウキは感心しながら、できるだけ雨に濡れないように気をつかいながら、店の軒先の下を飛びました。

するとその時です。どこからか、「くぅ…ん……」という、頼りない声が聞こえました。
「なんだろう?」

ヒコウキは不思議に思って、大通りから路地を見回しました。路地のすみっこには、小さなダンボールの箱が置かれています。うっかり見落としてしまいそうな小さな箱でしたが、鳴き声はどうやら、そこから聞こえてきます。ヒコウキは、中をそっとのぞきこんでみました。

泥混じりの雨水に汚れた子犬が一匹、穴が空いてすりきれたタオルにくるまって、哀しげな鳴き声をあげています。雨に濡らされた顔は、泣いているようにも見えます。子犬はヒコウキを見て、くぅ、と一声鳴きました。
「ぼくには、…何にも、してあげられない」ヒコウキはつぶやきました。
 スーツ姿の若い女の人が一人近寄ってきて、箱の中をのぞきこむと、すまなそうに、子犬に話しかけました。
「ごめんね。うちでは、飼ってあげられないのよ」

女の人は、行ってしまいました。ヒコウキは路地を飛び回り、ごみの入ったバケツの中から、まだきれいな面の残っている毛布を見つけだし、子犬のいるダンボール箱に入れてやりました。子犬はまたヒコウキに向かって、くぅん、と鳴きました。
「さよなら」
ヒコウキはそう言うと、路地を抜け、上に向かって飛び立ちました。
ヒコウキは、ひとりごちました。
「きれいな街並みのことは、かえでちゃんに話してあげよう。かえでちゃんも、きっと喜ぶ。…でも、あの子犬のことは、かえでちゃんには話せない。…かえでちゃんは、きっと泣くから」
ヒコウキは、雨雲をすり抜けようと、けんめいに飛びました。



晴れた空の下、石畳の上を、ヒコウキは飛んでいました。薄いグレーの石畳には、何メートルおきかに色タイルでできた絵がはめこまれていて、街全体が、なんとなく鮮やかでした。

歩道のはじっこには、鉄製の細いタイヤのついた木の台に、小さな花をたくさん集めた花かごを置いた、花売り娘の姿がありました。
「お花、いかがですかー」

花売り娘の声は澄んでいて、彼女そのものが、淡いピンクの花のような雰囲気でした。ヒコウキの見ている前で、一かご売れました。
「あのひとの売っている花を、買ってあげたいなぁ」
ヒコウキはそう思って、花売り娘の周りを、ゆっくり大きく回りました。
「あら?」
花売り娘はヒコウキに気づき、微笑みかけました。
「どうしたのかしら。こんなところに、おもちゃの飛行機…」

花売り娘はヒコウキに近づき、ヒコウキをつかまえました。そして、売り物の花かごの中から一輪、小さな黄色の花を抜き出すと、ヒコウキのしっぽのところに、器用に止めつけました。それからプロペラを巻き、「じゃあね」と一言つぶやいて、ヒコウキを、風に乗せるように、飛ばしました。
「お花、いかがですかー」
花売り娘は、また花を売り始めました。
ヒコウキは、自分のしっぽに咲いた黄色い花を、嬉しそうに眺めました。
「この花は、ちっちゃいけど、すごくきれいだ。かえでちゃんにぴったりの、かわいい花だ。でも、あのひとが、ぼくのために花をくれたのも、すごく嬉しいんだ。…だからこの花は、かえでちゃんとぼく、ふたりのものにしたいんだ…」

花売り娘の声が、風に乗って聞こえてきました。黄色い花は、れんげのはちみつのようなにおいがしました。ヒコウキは、ゆらめきながら、飛んでいきました。



どうやらだいぶ風に流されたらしく、気がつけば、ヒコウキは砂漠の上を飛んでいました。ヒコウキは、人間のように暑さを感じたりはしませんが、それでも、そこがとても暑いということはわかりました。
「困ったな。ここには何にもないし、誰もいない。面白い話も、ありそうにないな」
 ヒコウキは、早くここから抜け出して、人のいるところへ行きたかったのですが、なにせ、ここへは風に流されるまま来てしまったものですから、どっちへ行けば人のいるところへたどり着けるのか、まったくわかりませんでした。
 目印になりそうなものは、さっき偶然見つけた、小さなオアシスだけでした。他には、砂漠しかありませんでした。
「ほんとに、困ったな…、…おっ?」
ヒコウキは、遠くの方に、数人の人影を見つけました。「行ってみようっと」

行ってみると、その人影は、だいぶぼろぼろの服を着て、日に焼けて黒ずんだ皮膚をした、三人の男の人でした。一列に並んで歩いていて、二番目の人はやせっぽち、一番後ろの人はおなかが出ていて、二人とも小さなバッグを肩にかけ、「疲れ切ってもう何も考えられない」といった顔をしていました。先頭を歩く男の人だけが、体つきもたくましく、目にも、まだ光がありました。先頭の男の人は、三人分の荷物を入れた、元々は水が入っていたのであろう、大きな袋を背負っていました。
「しっかりしろ! ここで立ち止まっても、いいことなんか一つもないぞ」先頭の男の人が、後ろの二人をはげましました。
「んなこと言っても…もう…歩きたくねぇんだぁ…」二番目の男の人が、ぼやきました。
「そうだ…もう、だめだ…」三番目の男の人が、二番目の人に続きました。
「おまえたちだけ置いていってもいいのか? 頑張るんだ、立ち止まるんじゃない!」
「なるほどね」ヒコウキはつぶやきました。「あのひとがいなかったら、みんなとっくに倒れてるな」

ヒコウキは、自分に気づいてもらおうと、三人の前をゆっくり飛びました。五分ぐらい経って、二番目の男の人が、やっとヒコウキに気づきました。
「…あれ、なんだ?」
「おもちゃの、飛行機…?」

しばらく呆然としていた三人でしたが、三番目の男の人が、ついにヒコウキの方へ歩き始めました。
「おい! 何やってるんだ!」

先頭の男の人が止めようとしましたが、三番目の男の人は、止まりません。先頭の男の人の手を払いのけ、
「この飛行機はきっと、神様がおれたちのために、ここに連れてきたんだ。この飛行機についていけば、きっと助かる……」
「馬鹿なことを言うな! これは幻覚だ!」
「幻覚じゃないんだけどな…」

三番目の男の人と、それを追いかける二人を連れて、ヒコウキは、オアシスの方へゆっくりと飛んでいきました。
やがてオアシスにたどり着き、三人は歓声を上げました。
「やった! やっぱりそうだ! このヒコウキは、神様からの使いだったんだ!」三番目の男の人が、はしゃぎながらそう言いました。
「何にせよ良かった! これで水が補給できる!」二番目の男の人が叫びました。
 ヒコウキは、先頭にいた男の人の側に寄ると、そっとささやきました。
「あなたがいなければ、みんなとっくに倒れてた。二番目の人がいなければ、みんなぼくに気づかなかった。三番目の人がいなければ、誰もぼくについて来なかった。三人で頑張って、生きのびてね」
 男の人にはヒコウキの言葉は伝わりませんでしたが、別にかまいませんでした。ヒコウキは、もう少し北を目指して、飛んでいきました。



無事、少し北に戻れたヒコウキは、大草原の上を飛んでいました。風が草をなびかせて、まるで緑の海原といった風景です。ヒコウキのちょうど真下に、独特な衣装をまとった遊牧民たちが、テントを張っています。ヒコウキは、少し高度を下げました。
「きゃはははっ!」
「やーだ、やめてよお」
「まってまってー!」

テントに囲まれてできた広場で、部族の子供たちがふざけあっています。そのうちの一人は、どこかかえでちゃんに似ていました。
「あははははっ!」

かえでちゃんに似たその女の子の、元気に走り回る様子を見て、ヒコウキはかえでちゃんが恋しくなりました。
「かえでちゃんのところに、戻りたいな…」
「あ! 見て見て、鳥がいっぱい!」

かえでちゃんによく似た女の子が、空を見上げて叫びました。ヒコウキが後ろを見ると、そこには灰色の鳥の群がいました。旅に出てすぐの頃に会って、ヒコウキに「アメリカが面白い」と教えてくれた、あの鳥達でした。
「うわぁ! 久しぶり! 元気だったかい? キミがまだ空を飛んでたとは、思わなかったなぁ」一羽の鳥が、懐かしそうに言いました。
「ほんとに久しぶりだね。また会えるとは思わなかった」ヒコウキも、嬉しそうに言いました。
「あれから、どこに行ったんだい?」
「きみ達に教えてもらったとおりにアメリカに行ったよ」
「その後は?」
「そのまままっすぐ東に。途中、ちょっと流されたりもしたけど」
「まっすぐ東!? ってことはキミ、地球を一周してたのか?G」鳥達が、びっくりしてたずねました。
「そう…なのかな。たぶん」
「すごいや! 大したもんだよ!」
「そうかなぁ?」
「そうさ。キミの友達だって、きっとキミをほめてくれるよ!」
「ほんとに?」
「ああ。そういえば、友達には、あれから会ってないって事だよね?」
「うん、そうだよ。そろそろ帰ろうと思ってるんだ」
「そうか。それなら、東南東の方に行けば、きっと帰れるよ。行きすぎるとまた太平洋まで出ちゃうから、気をつけるんだよ」
「ほんとに、ありがとう」
「お礼なんかいいよ。面白い話は、見つかったの?」
「うん、おかげさまでね。帰ったら、全部話してあげるんだ」
「だったら、急いで帰らなくっちゃね」
「うん。何から何まで、ありがとね」
「だーから、お礼なんかいいってー」
「気をつけろよー」
「元気でねー」
「バイバーイ」
「バイバーイ」

ヒコウキは、東南東の方角目指して、一直線に飛んでいきました。かえでちゃんの笑顔を思い出しながら、ヒコウキは急ぎました。



ヒコウキは、見慣れた建物の建ち並ぶ、懐かしい町に帰ってきました。ここは、かえでちゃんの町です。あまり外に出られなかったかえでちゃんが、とても嬉しそうに歩き回っていた公園の芝生が、もう、ヒコウキのすぐ近くに見えています。
 かえでちゃんの家は、この公園のすぐそばです。しかしヒコウキは、家には向かいませんでした。
 かえでちゃんの入院していた病院は、ここから電車に乗って二駅のところにあります。しかしヒコウキは、そこにも向かいませんでした。かえでちゃんが今どこにいるか、ヒコウキには、ちゃんとわかっていたからです。

ヒコウキは、駅とは反対方向にある、小さなお寺に向かいました。お寺の裏手には、お墓が並んでいます。ヒコウキはお墓の間を飛び回り、『野崎家之墓』と刻んである墓石を見つけました。

ヒコウキはお墓の周りを一回りすると、お墓の目の前に、ゆっくりと着地しました。それから、自分のしっぽにくくりつけられた、もうすっかり色を失ってかさかさにひからびた、ヒコウキにとっては最高にきれいな花をしっぽからはずすと、それをお墓に供えました。
「すごくきれいな花なんだ。かえでちゃんとぼく、ふたりのものにしようと思ってたんだけど、かえでちゃんにあげるよ…」
ヒコウキは、墓石によりそうように、かたんと倒れました。
「ぼく、地球を一周してきたんだ。その間に、面白いことがたくさんあったよ。ひとつひとつ、全部、話してあげるね……」
役目を終えたゴムが、ぷちんと音を立てて、切れました。

                            お わ り