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手痛い失恋から三ヶ月。
もう恋はしばらくいい、と彼女は思っていた。
こまめに変えていた化粧は、仮面のようにいつも同じ化粧になった。
悪いことは重なるもので恋に破れてからというもの仕事も友人関係もうまくいかなくなってきた。
彼女はやるせない気持ちでやりのこした仕事をそのままに、帰り支度をした。
化粧室で鏡を覗く。
少し疲れたような顔が、そこにあった。
近頃行き付けの店でカクテルを嘗める。
静かに流れる時間。
彼女は勘定を済ませると席を立とうとした。
「マスター、彼女にもう一杯ね。」
後ろから背広の男が声をかけた。
彼女がびっくりして振り向くと、この店でよく見かける背の高い男だった。
男は当たり前のように彼女の隣に腰掛けて話し掛けてきた。
男なんてウンザリと思っていた彼女だったが、酒のせいか、つい余計なことを喋りだしていた。
何度か同席するうち、彼女は男に会うのが楽しみになっていた。
だがいつも身の上相談のような色気のかけらもない会話。
男のほうも彼女の気持ちを察しているのか、それ以上動こうとしなかった。
彼女は別れ際、何度も唇を噛んだ。
ある日の夜。
いつもは彼女よりも遅く現れる男の姿がそこにあった。
バーカウンターに並んで腰を下ろすと、男は包装された小箱を取り出した。
「プレゼント。」
包みの中には、華やかな色の口紅が収まっていた。
彼女は男と目を合わせると、何かを悟ったように立ちあがり化粧室へ向かった。
鏡の前で、貰ったばかりの口紅を引いた。
彼女はいきいきとした美しい女に生まれ変わった。
カウンターへ戻ると、男はニコリと笑って手を上げた。
テーブルの上には、いつもより少し強い酒の入ったグラスがふたつ並んでいた。
<おわり>
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