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ー都会の湖ー
その夜は夕方に降った雨のせいで、酷く蒸し暑くなっていた。いわゆる熱帯夜だ。しかもこんなよりに彼女と会うなんて、ずっと音信不通になっていた彼女だった、俺の浮気が原因だった。それは突然に携帯が鳴った、そこから聞こえる声は懐かしくも、心苦しくなるような澄んだ声だった。
「ねぇ、今夜会えないかな?何時でもいいの」
「え・・・・・、あ・・・・うん・・・8時頃ならいいけど」
それから俺は必死で考えた、あの浮気が1晩限りだったことを。今は1人でただ日々追われる仕事をしているだけということを・・。彼女のことを忘れたことはないと言うことを。
ピシャ!ピシャ!ピシャ!
薄暗い電灯の下から彼女が現れた、あの独特な歩き方は変わっていないが、長かった髪はショートになっていた。そしてやつれているかとかってに想像していた彼女とは、別人の生き生きした彼女がいた。
「久し振りだね!少し痩せた?・・・ねぇ!!こんなとこであうのは素敵ね。湖の上でさ!」
「湖の上?」
「そう、濡れたコンクリートが湖面みたいで、電灯がうつって綺麗じゃない!!こんな都会で・・・」
そう言うと彼女は軽いダンスを踊っていた、俺は完全に彼女に踊らされているカンジだった。
俺は必死に昼間考えていた言葉を、頭の中で整理して一番納得のいくような言葉を出そうとしていた。
「あ・・・・!七海!!俺は!!」
その言葉を遮るように彼女が大きな声で話し始めた。
「わたしね!カナダにいくの!!向こうで仕事も見つけたの!1人で行くのよ!凄いでしょ!・・・もう昔の私じゃない、あなた無しじゃ生きていけない頃の・・・。綺麗な湖があるの。大自然の中に、こんな幻の湖じゃなく・・・。あなたももう私にとっては幻だったんだよ。」
唖然とした、言葉が出なかった。彼女はいつも結婚がしたいと言っていた、俺がいないと生きていけないとも言ってた。正直ウザかったし、重いくらいの気持ちだったが、彼女が俺から離れていくはずはないと思っていたし、今日の呼び出しもよりを戻すためだと思ってた。
「最後に逢いたかったのは、あなたの側にはもう私は居ないって言うことを教えるためだよ。・・・・元気でね・・・さようなら!!!」
そう言うと彼女はまたあの独特の足音だけを残して、暗闇へと消えていった。湖面の上に俺を残て・・・・。
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