「ほづみみづほの日記 2月某日 ナミダモロイ」 エッセイ ほづみみづほ
今日、八歳と三歳の二人の娘達とビデオを見ていた。内容はねずみ印もどきのアニメ「白鳥の湖」。すると突然、うえの娘に異変が起きた。ぽろぽろと泣き出したのだ。
さして悲しいシーンでもなかった気がするのだが、私は、泣いているのを気付かれぬように努力している、健気な我が子の姿を見て悟った。彼女もまたナミダモロイ人生を送るのだ、と。
親である私は、今までさんざんナミダモロイ人生を送ってきた。子供の頃は灰谷健次郎の「兎の目」を何度も読んで泣いた。そして、吉田としの「誰に捧げん」を読
み、突っ伏して泣いた。青春時代はカドカワ映画で、安っぽい涙を流した。初めて東京ディズニーランド行ったときは、「イッツ・ア・スモールワールド」にうるうるきていた。(以前、テレビで明石家さんま氏が同じことを言っていたので、ちょっと安心した。ただし彼も、皆から「変!」と言われていたが)泣いた映画や演劇は数知れず・・・だが、アニメ「火垂るの墓」だけは、何度も泣いた結果、題字や予告だけで反射的に涙がでてくるので、気をつけている。結婚し子供ができて、最近はますます涙腺がゆるみっぱなしだ。
年のせい・・・と言われてしまえばそれまでなのだが、本人は結構ハズカシイ思いをしなければならないので、皆に気取られないように注意が必要だ。
一番気をつけなくてはいけないのがテレビだ。映画や演劇、ビデオを見るときは、ある程度覚悟をしているので大事に至らないが、テレビはいけない。突然目に飛び込んでくるし、明るい居間だとごまかしようがない。最近恐ろしいのは、某生命保険会社のCMだ。家族の愛、をテーマにしたと思われるスナップ風の写真と、小田和正の歌声との相乗効果で、私の涙腺はあっけなく白旗をあげてしまう。
自分の子供の前で泣くのもかなりハズカシイので、要注意だ。例えばそれは、下の娘と何気なく見ているNHK教育テレビだったりする。最近このチャンネルは私の脅威だ。がんこちゃん家族の親子愛に心を打たれ、ノビローたちの友情に涙するのだ。(知らないと思う。すいません。)大竹しのぶの朗読、UAの歌声、イルカの主題歌は、寄ってたかって私を泣かそうとする。人形劇の番組で「きつねの窓」を見たときは、星飛馬のように泣いてしまった。子供の頃大好きだったお話なのだ。「みんなのうた」もかなりヤバい。ちなみに子供番組でよく流れる「グリーングリーン」「小さな木の実」「翼をください」。これらの曲を聞けば、いつでもどこでも泣ける自信がある。
要するに「子供ネタ」に弱いのである。かなり弱い。めっぽう弱い。ときどき「あほちゃうか」と思うような内容で、泣いている自分に気付く。作られた映像でこれだけ泣かされているのだから、我が子の姿には・・・何をかいわんや、である。告白すると、運動会の短距離走に弱い。我が子が走る姿を見ていると、なぜかじわっと目が潤んでくる。昨年の運動会で、ビデオを構えながら「やばいっ」と思っていたら、そばにいた姑が涙声で話していた。自分だけでなくてほっとしたような、笑ってしまうようなできごとだった。子(孫)の走る姿を見て、嫁姑そろって泣いているさまは、ほぼコントのように見えるに違いない。
しかし何と言っても、今までの人生の中で自分の涙もろさを一番恨んだのは、娘の卒園式だろう。この季節になるといやでも思い出す、あれは二年前のことだった。むろん最初から最大級にイヤな予感はしていたが、式が進むに従って、目頭にハンカチを当てる、その程度だった。ところが、突然会場が暗くなり、子供達の歌声をバックに、保育園での思い出を振り返るスライドが始まったのだ・・・。私はこの企画を考えた人を恨んだ。そして、顔中のファンデーションが手の中のハンカチにぬぐい取られた頃、卒園式は終わった。すると、やおら前列の若いお母さんが私のほうに振り返り、あきれたようにこう言った。「ずーっと泣いてたな。」
ああ、どうしよう。この春は下の子の入園式だ。
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