男性からもらった300万のおかげで、逃げることができた。
その後、その男性と付き合うようになり、長男を妊娠したのを機に結婚した。21歳でママになった。
地方とはいえ、繁華街近くに200坪の豪邸を構えた。所有する車はジャガー、ポルシェなど3台。舅が亡くなったばかりですべての経営を夫が引き継いでいた。キャバ嬢の経歴もあったが、ごきげんようの私立小学校に通った元お嬢様のアユさんと資産家のお坊ちゃまの夫。
「息をしているだけなのに毎月お金が入ってくる」
そんな生活だった。
けれど、夫はアユさんへは毎月生活費として20万しか渡さない。
「金持ちなのにケチだった」
しかも、夫に経営手腕はなかった。店は次々つぶした。
「いつも聞かされるのは従業員や客のグチばっかり。いやなことがあると逃げてしまうタイプなんですね。苦労したことがないからピンチに弱い。家事とかも絶対手伝わないし、子どもとも気が向いたときしか遊ばない。ほかに女は作るわ、仕事に行かずにゴロゴロしてるわで、人間として最低だと思いました」
二人目の誕生2か月で、彼女から離婚を切り出した。けれど、夫は「おまえには絶対子どもを渡さない。どうしても別れたいなら、裁判でも何でも起こせばいい。おれに勝てるわけがない」と強気だった。
ここから彼女の「離婚計画」がスタートした。
「私の手で子どもを守らなくてはと思いました。こんな環境で育てても、子どもはろくな人間にならないと。100%裁判で勝てると確信したときに離婚してやろうと決意したんです。でも、それにはお金と証拠がいる。それを確保するまでがんばろうって思いました」
お金は裁判になったときの弁護士費用と母子3人で独立して暮らすためのお金。子どもを抱えたままキャバ嬢には戻れない。また、戻る気もなかった。持っている資格らしきものは運転免許だけ。水商売でも運転手でもできるかもしれない。でも、その間幼い子を家に置いてはいけない。頭の中で母子3人の暮らしを何度もシミュレーションしてみた。
「とにかく、何か生活の糧になるものを見つけるまで生活できるお金を貯めよう」
彼女がやったのは「家庭内集金(?!)」だった。
夫が酔っ払って帰宅するたびに、夫の財布からお金を抜いた。夫は常に100万以上の札束を財布に入れている。勘定などしないから数万、もしくは10数万ほど抜いても気づかない人間だった。さらに、夫が女とおそろいで買いながらつけないブランド時計や指輪やネックレスも拝借した。遠方の質屋に持って行き現金に換えた。贅沢三昧の生活を送る姑がたまに買ってくれる指輪なども、翌日すぐに質屋で現金に換えた。新しいうちに交換するほうが売値は高いからだ。
そして「証拠」。子どもの親権と養育権をとって離婚するための材料だ。実の母に相談すると、「帰宅した時間やいわれた言葉とかを克明にメモしておくといい」といわれた。酔っ払って夫にぶたれたこと、毎日の朝帰りもすべて大学ノートにメモしていった。
精神的にはつらくなかった。
「家が広いから一緒に寝たり、顔を合わせなくてすむんですよ。あれがアパートだったら参ってたと思う」
バスルームふたつ、トイレ三つでいくつも部屋がある200坪の豪邸のだだっ広さが、ストレスフリーの家庭内離婚を支えた。
そうやってある程度お金が貯まり見通しがつきそうになった2年後。アユさんは3人目の子どもを妊娠した。半ばレイプされるかたちで、新しい命が彼女のからだの中に宿った。
「産もうか、おろそうかと迷いました。夫に言う前に堕胎するのは簡単だったし」
けれど、彼女は産む決意をする。(次週に続く) |