FILE.10 産みたくない私
【続編】読者からのメール 07.04.03
――『産みたくない私』の主人公サトミさん宛に、早速読者の方からメールが届いたのでご紹介します(一部、プライバシー保護のため変更してあります)――

こんにちは。いつもマフィンネットを楽しく読ませていただいています。
読むのみで、投稿は初めてなのですが、サトミさんのお話が他人事に思えなくて、まるで自分のようで…。

サトミさんが自分の母を憎み、
今も呪縛されている気がするのは、どんなにか苦しかったでしょうね。
私も、今も、両親が大嫌いです。
父は夫の両親に結婚前から一度も会わず、夫の母の葬儀にも出ないような人です。
結婚してからも、父のため親戚付き合いでは肩身が狭い事ばかりです。
母はサトミさんのお母さんに似ています。
同性だからこそ、よく見える欠点がありますよね。

まず、幸せな家庭に育った人には親を嫌うことを、到底理解してもらえません。
私の夫も、最初はそうでした(今は理解してくれています)。
今年で結婚ウン年、その間にひとり目の子を流産、その後二人出産して私は意識が変わりました。
「確かに両親が嫌いだけど、今は夫がこの世で一番頼れる家族。自分の家族を大事にして、過去(実家の両親)にはこだわりすぎないでいよう。今の、この生活を楽しもう」と。
そして流産後に自分がホルモンバランスを崩し、体調を悪くして初めて母の不安定さも更年期からだと思い当たったのです(母は今も投薬を受けています)。

出産前、私も不安でした。良い母になれるのかなって。
自分や子供に、母に似ている部分を見て苦しく思うこともあります。
でも反面教師にして良い所をのばしていけると思うし、そうして乗り越えていきたいです。
サトミさん、きっと大丈夫。
あなたの人生を精一杯花開かせてください。
どんな道を選ぶにしても母親にこだわり過ぎないで。
色々な可能性を秘めた、あなた自身を大切にして下さい。
たとえ似ている部分があっても、あなたはお母さんとは違う人間ですもの。
お母さんと、同じ人生が待っているわけではないのですから…。
自分の意思をしっかり持てば、たとえ出産しても自分のお母さんと似た母親にはならないですよ(嫌いだからこそ、ですよね)。
いずれは先に逝く親に呪縛されているのは、時を無駄にするのと同じことだと思います(すごい表現ですけど、本音です)。

ご主人との今の生活を、楽しんで大切にして下さい。
夫婦で話し合って喧嘩したって、いいじゃないですか。
とことん話さなきゃ理解しあえないのですし。
お母さんのことは、離れて住んでいるのなら気にしないのが一番です。
サトミさんの幸せをお祈りしています。負けないで頑張ってくださいね!
長文失礼しました。これからもマフィンネットを楽しみにしています。

――いかがでしょうか。
サトミさんにもメールを転送し読んでもらいました。
 「同じような経験や悩みを持っている人っているんだなあって思いました。メールは本当にありがたくて、実際に会ってしゃべりたいくらいです。ただ、この方はお母さんが更年期で不安定だったというような理由がわかって、理解できたみたいですよね。私はそのあたりがわからない。物心ついたときから母はあんなふうでしたから」。

――サトミさんはそう話したので、私のほうからこんなことを話しました。
“親と私たちって生きてきた時代が違うじゃない? 育てられ方も違うし、人生での経験も違う。お母さんがそんなふうに自分の気持ちをつい押し付けてしまうようになったことにも、きっと理由や背景があるんじゃないかな。そのあたりを理解しようとすると、気持ちを整理できるかも”。
 「そうですね。母親はきっと経験値が少ないんですね。勤めに出たこともないままお見合いで結婚して、ずっと家に縛られていたようなところがあります。自立したことがない。世間が狭いんですね。その少ない経験のなかでしか物事を考えられないから、私なんかが見ていてずごく非常識だったりするのかもしれません。でも、やっぱり整理できるまでにはいかないですね」。

――そこで、子どものことをもう一度聞いてみた。
 「夫とは相変わらず平行線です。この(インタビューを受けた)機会に、いろいろ考えましたけど、やっぱり子どもが生まれて一人で育てられるのか不安なんです。赤ちゃんとか抱っこしなくちゃならないでしょう。スキンシップできるのか不安。母親に抱きしめられた記憶とかないんです。私は小さい時から、母親にとって人形っぽかった。母親が思い通りに動かしたいだけ、みたいな。やっぱりマイナスなイメージしかないんです。でも、この方が書いてくれたように、母のことにこだわりすぎずに自分自身が本当にどうしたいのか、もう一度考えてみようと思います」。

――そう話してサトミさんは電話を切った。子どもを産むことを躊躇する理由は、母親との葛藤から生まれる自信のなさもあるが、仕事を続けられるかどうか見通しが立たないことに加えて、住み慣れない都会で孤立しないかなどさまざまな不安がある、そんなことも話してくれた。
 そんな不安の一方で、「少子化だし。子どもを産まないのは私だけじゃないし」という安心感が存在するのも確かだ。
「不安感」と「安心感」の真ん中で揺れているのは、きっとサトミさんだけではないのだろう。
※引き続きサトミさんへのお便りはこちらで受け付けます。→メールはコチラ
(続編おわり)