FILE.6 4年目の逆転勝訴
【Ver.1・FILE20「母の挑戦」続編】 07.01.09
――Ver.2から読み始めた読者の方には申し訳ないのですが、今回は、Ver.1のFILE.7
FILE.20でルポしている、こずえさんの離婚裁判の行方について、続編をお届けします――
 こずえさんは母ひとり子ひとりの夫のもとへ嫁いだものの、DVなどが原因で別居。離婚しようとした矢先に、下の子(娘)を夫からさらわれてしまった。それから4年。
 2年前には、娘を取り戻すため高裁までいった。ここまでは『母の挑戦』でレポートした。その後、1年間もかけて、調査官による双方の家庭環境の調査(調査官調査)が二度にわたって行われた。彼女はこの間、通常では考えられないような努力を重ねた。長男の学校や学童保育所、保育園時代の友人、地域の子育て仲間の協力を得て、署名を集めた。『○○ちゃんをお母さんのもとに戻してください』という陳述書への署名だ。実に1000人近い署名が集まった。
 「家裁でも、地裁でも、こちらの条件はのんでもらえずに上訴し続けてきました。去年の4月には娘を迎え入れたいと思ったけれど叶わなくて……。高裁まできたし、もうダメかもと思いました。ずっとあきらめかけたとき、子育て仲間のママたちが、『地域の私たちが娘さんが戻ってくるのを待っているっていう気持ちを、かたちにしよう』といってくれて。署名を提出したあとから、少しずつこちらに流れが傾いたような気がします」。

 地域でかかわりをもちながら子育てをするこずえさんに比べて、夫側は80歳近い姑に任せきりの子育てが、徐々に浮き彫りになってきた。調査官の質問をたくみにかわす夫だが、小学校へハイヤーで送迎したり、運動会などの行事も姑任せの事実が発覚したのだ。
 調査官調査の結果をもとに実施された裁判の席上、閉廷する際、ひとりの裁判官がこずえさんににっこりと微笑みかけたという。
 「確かに私の目をみて、微笑んだんです。もちろん無言でしたけど、『お母さん、大丈夫ですよ』って言ってくれたような気がしました。その瞬間に、もしかしたら勝ったかもって思いました」。
 結果は、4年目にして初めての勝訴だった。しかも、判決内容は、彼女の希望がほぼ全面的に入ったものだった。「慰謝料は微々たるものですが、ふたりが成人するまでの養育費はこちらの希望額でした。何よりも娘の養育権も親権も、私になることが決まったのが本当にうれしかった」。こずえさんは、そう言って涙ぐんだ。

 この判決から1か月後、夫は予想通り上訴してきた。しかも、それまでの弁護士に加え、新たにもう一人弁護士を雇ったという知らせも受けた。夫側の上訴が認められれば、とうとう「最高裁」まで上り詰めることになる。
「夫側の上訴を裁判長が認めれば、最高裁で争うことになります。でも、仮にそうなっても、私側に法的な落ち度が認められない限り、覆ることはないそうです。3年以上も敗れ続けてきた裁判で逆転勝訴したわけだから、今回の高裁での結果はかなり重いのだそうです」。
 彼女の両親は大喜びし、早くも戻ってくる孫娘の机や本棚を購入し、彼女と長男が住むアパートに運び込んできた。「気が早いよって思いましたけどね。ずっと裁判を続けてきたなかで、うちの親がどんな思いで見守ってきてくれたかを考えると、拒否するわけにもいきませんでした」。
 来年早々に裁判所から連絡が入る予定だ。上訴が認められなければ、間もなく娘はこずえさんの手元に4年ぶりに戻ってくる。認められて最高裁までいったとしても、数か月で決着がつく。
「弁護士さんは大丈夫ですよっていってくれるけれど、それでも、不安でしかたありません。向こうはお金はありますから、新しい弁護士も雇って死に物狂いで挑んでくると思う。はっきりいって怖いです。でも、最後のひと踏ん張りだと思ってがんばります。ママ仲間もみんな応援してくれるし。私はひとりで戦ってるんじゃないって思えますから」。

 先月のクリスマス。長男は、サンタさんにプレゼントのリクエストをする手紙を、なかなか書こうとしなかった。口では「ゲームソフトがいいかなあ。サッカーの日本代表のユニホームにしようかなあ」と迷っているようだ。見かねた彼女は「欲しいもの、まだ決まらないの? お手紙書かなくちゃ、サンタさんもなにを送ったらいいかわかんないよ」と話した。
 翌朝のイブの前日。リビングに置いた小さな30センチほどのクリスマスツリーの下に、一枚の紙が置いてあった。
 「サンタさん。ぼくはクリスマスのプレゼントはいりません。そのかわり、いもうととくらせるようにしてください。おくりものはいもうとがいいです。おねがいです」。
 こずえさんは、涙が止まらなかった。(終わり)