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FILE.3 二世代離婚
【中編】息子の言葉 06.11.07 |
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地獄からの使者は、「取り立て」だった。
1日中、自宅の電話のベルは鳴りっぱなし。玄関のインターホンも鳴り続けた。朝でも昼間でも、夜中であろうが、消費者金融の男たちが家の前から動かない。だいたいは1人か2人で来たが、時には3人で押しかけてくることもあった。
ドキドキしながら2階のカーテンの隙間から見下ろすと、家の門の前でタバコを吸っていた。表札にタバコの灰をこすりつけては、吸殻を道端にほおり投げる。コンビニ弁当のゴミやコーヒーの空き缶、ペットボトルをあてつけのように捨てていた。
「ここんちのダンナは借金したまま返さないんだ。ひどい男だよ!」。
「カミサンまで一緒になって借りててね。夫婦して泥棒だよ!」。
携帯で電話をする真似をしながら、周囲に聞こえるよう大声で叫ぶ。そんな嫌がらせが続いた。居留守を使うため、泣き叫ぶ子どもの口を両手でふさいだこともある。玄関から一番遠い風呂場やトイレで、子どもを抱っこしたまま泣き出さないよう揺らし続けた。
夫に訴えても、「もう返したのに」とか「そんなところから借りていない。詐欺だ」とむなしい言い訳を繰り返すばかりだった。それでも不満を並べると、逆ギレして反対に怒り出す始末。そのうち、残業と偽って夜はまったく帰ってこなくなった。
メイさんは離婚を考え始めた。そんな時、うっかり出た電話で、取り立て屋からこういわれた。
「あんたの名義なんだから、あんたが死ぬまで返すしかないんだよ。あんたもダンナも生命保険に入ってるんでしょう。それで金は返せるんじゃないの? それかさ、いい仕事紹介してあげてもいいんだよ。ビデオとかに出てくれれば一気に借金なんて返せちゃうよ」。
「いい加減にしてっ!」。力任せにガチャンと電話を切った後、背中が凍った。
「私か夫が死んだ保険金で返せってことですよね。死ねと言ってるのと同じじゃないですか。それにビデオっていうのはAVのことですよね。本当にこれが地獄なんだと思いました。もう、いやだって」。
夫はたまに夜帰ってきても、寄ってくる子どもをうるさがるようになった。夜中ぐずった長男の頬をひっぱたいたりした。彼女とけんかになれば、暴力をふるう。そのうえ、なぜか携帯電話の使用料金が8万円も請求されてくるようになった。借金まみれになり、自暴自棄になった夫は携帯電話の出会い系に走っていた。
「借金、うそ、出会い系、暴力。これだけやられたら、十分だって思いました。もう、別れようと決意しました」。
それまで何度も離婚を考えたが、小さい子が2人もいて、生活していく自信がなかった。取り立てに追い詰められるなか、うつ状態になり薬を飲む毎日に。彼女自身、何も考えられず無気力な状態だったのだ。
けれど、夫にぶたれた翌日、長男がつぶやいたひと言で目が覚めた。
「あのね、ぼくね……。パパ、いらない」。
「そうだね。いらないね。ごめんね。ママを許して。もう、絶対にひどい目にはあわせないから」。
あふれる涙をぬぐいながら、散らかった部屋を掃除した。何時間もかけて掃除した。
「なぜだかわかんないけど、その日は狂ったように掃除しました。掃除機のブーンっていう音が、自分を励ましてくれてるように感じましたね」。
(戦うんだ、戦うんだ)と自分に言い聞かせたという。何と戦うのか、自分でもわからない。戦う相手はきっと夫だけではないのだろう。けれど、何かに立ち向かわなくてはならない。そんな気がした。メイさんは、体を動かすことで、エネルギーがわいてくるような気がした。(次週に続く) |
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