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猛勉強したわけじゃないけれど、ちゃんと大学も出た。
大企業ではないけれど、ちゃんとした会社へ就職もした。
負け組にもならずに無事結婚。すごくエリートとか、ハンサムとかではないけれど、どちらかといえば平凡だけれど、礼儀正しくまじめな男性と家庭を持った。
共働きが希望だったけれど、妊娠したら夫に「家庭を守ってくれ」といわれ、会社を辞めた。子どもが生まれて退社する女性は世の中70%。7割もいるんだから、自分がその中に入っても仕方ないと思っていた――。
「まあ、腹の立つことも多々あったけど、それなりに平々凡々と幸せでした。それは、そうなんだけれど…」
自分の半生をあらかた語ったナナさんは、急に口ごもった。
「私、ね、キライなんですよ。アレが…。あんまり好きじゃないの。それがつまずいた原因かなあ」とあきらめたような表情で言った。
26歳で結婚した。経理の仕事をしていた三つ年上の夫は明るくて社交的。どちらかといえば自己主張するのが苦手なナナさんの目に、夫はまぶしく映った。
「夫婦は凹凸のほうがうまくいくっていうじゃないですか。性格は正反対だったけど、そのほうがいいかもと思いました。自分にないものをもっている夫が、頼もしくも感じたし」
性格の凹凸はうまくいったが、身体的な部分の凹凸にモンダイがあったんですね?
「ふふふふ。うまいこといいますね(といいつつ、冷ややかなまなざし)。モンダイっていっても、たぶん、私だけの問題かも。あ、でも、ふたりでするんだから、やっぱふたりの問題ですよね。あの、ストレートに言いますけど、夫は週に3、4回したくなる人だったんです。異常ですよねえ。そうでもない? 私はもうしなくて済むのなら、もう一生しなくていいです、っていうタイプ。やっぱ、私がヘンなのかなあ。でも、そういう相談ができる相手もいないし…」
もともと淡白なナナさんだったが、新婚時代はがんばって夫についていった。火・木・土・日。出張がなければ、夫はこのローテーションを崩さなかった。出張中も他の社員が宿泊しても、最終の新幹線で飛ぶように帰ってきた。
うらやましいと思うか、いや、週4回はちょっと迷惑!と思うかは、人それぞれだろう。避妊具メーカーの調査によると、日本人の年平均セックス回数は46回で1位のフランス人の約3分の1らしい。フランス人は137回だそうだから、ナナさんの夫はフランス人だと思えばよい。それに「火・木・土・日」を愛情を確認する日ととらえれば、「それだけ愛されてるんじゃないですか!ごちそうさまっ」と言いたくもなる。
「ええ。私も最初はそう思ってました。でも、子どもが生まれて、わかったんです。愛情とか、私への情熱とかじゃないって。とにかく、“単純に(セックスが)好きな男”なんだと」
セックスを“愛情を確認する行為”だととらえると、回数以上にその内容を問いたくなる。
「内容? あ〜、もう、思い出したくもないですね。ビデオとかやたらそういうのでお勉強してたんだと思うの。かける言葉もわざとらしいし。付き合ってるころはひたすらやさしかったんだけど、結婚するとなんかもう自分のモノって感じでこっちの体を扱うでしょ。それが耐えられなくて。なんていうの? 基本的に自分勝手に終わってましたね。私? もう、早く終わってほしいから感じたフリをしてました」
う〜ん、やはり…。
ナナさんの経験談は、データを象徴している。実は、上記の避妊具メーカーの調査(世界各国35万人対象)では、日本人女性の4割が「性的絶頂感に達したフリをした経験がある」と回答。しかも、満足度は世界最低レベルなのだそうだ。この“なんちゃってエクスタシー”(と勝手にネーミング)は、出産後はさらに高くなってしまうらしい。
第一子が生まれ、育児に追われる彼女は夜になるともうヘトヘト。夫のお相手をするどころじゃなくなった。出産してしばらくは“なんちゃってワザ”を使って強制終了させていたが、パソコンではないけれど起動するのもイヤになってきた。
「出産した時点でほぼセックスレスになったんですけど、子どもがハイハイし始めて目を離せなくなったころからは、完全に受け付ける余裕もなくなりました。もう、子どもの世話で体力使い尽くすんですよ。夜はもうお願いだから寝かせて、って感じ。それなのに、すごくしつこい。寝たふりをしていても起こされてしまうから、夫がベッドにくると飛び起きてシャワーを浴びに行くんです。夫が待ちくたびれて眠ってくれるのを祈りながら、お風呂場で粘ってました」
しかも夫は、もともと子ども好きなナナさんの愛情を独り占めしたくて、赤ん坊にさえやきもちを焼いた。夜泣きする子をあやしていると、「なんで子どもばっかりかわいがるんだよ」といきなり襲ってくる。
「もう、夫に対してあきれ果ててました。オレは子どもが好きだからいっぱい作ろうと言って襲ってくるんですけど、好きだというわりに面倒はまったくみないわけ。常に自分のやりたいことを優先するんです。土日の休みは、釣りだの、スキーだの、サッカー観戦だのって自分の趣味に走る。一人でさっさと出かけちゃうんですから。文句をいってもまったく聞きませんでした」
子作りは好きだけど、子育てには興味がない。疲れた自分をいたわるそぶりも見せない夫。ナナさんの頭の中に、“離婚”の二文字がちらつき始めた。(次週に続く)
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